「自然との共生をテクノロジーでドライブする」——IoTプロダクトでクリーンエネルギーへのシフトを加速させ、持続可能なエネルギーの未来を創るNature株式会社。
IoT技術で快適さを追求しながら、限られたエネルギーをうまく利用するために開発された スマートリモコン『Nature Remo』と次世代型HEMS『Nature Remo E』は、発売から3年弱でIoTベンチャー界異例の、累積販売台数 20万台を突破しています。
プロダクト開発だけでなく、新規事業にも力を入れ、0→1と1→10までの醍醐味を味わえるNatureでは、一体どんなエンジニアたちが集っているのでしょうか。
今回は、CTO松木様に、Nature株式会社のビジョンやプロダクト、チームの魅力を伺いました。
Nature Remo:自宅のテレビやエアコンやライトなど既存の家電を、声を使ってスマート スピーカー経由で操作し、外出先からスマートフォンアプリで操作できるIoTプロダクト
松木 雅幸
Nature株式会社 取締役CTO
大学で中国語と機械翻訳を学び、中国でのITベンチャーの立ち上げ、語学学校の営業兼システム担当、SIer、ソシャゲ開発のリードエンジニア、エンジニアリングマネージャー、SaaSのプロダクトマネージャーなどの紆余曲折を経て、2019年より現職。 長期運用に耐えうるインフラを意識した設計・開発を得意としており、ISUCONに3度優勝している。 OSS活動が趣味で200を超えるリポジトリをGitHub上で公開している。著書に「みんなのGo言語」(技術評論社・共著)等
——本日はよろしくお願いします。まずは、松木さんがNatureへ入社した経緯を聞かせてください。
実はNatureで初代CTOを務めた大塚さん、2代目の村瀬さんは、どちらも前職カヤックの同僚だったという縁がありまして。お二方ともカヤックでエースエンジニアでしたので、すごいなぁとずっと憧れを抱いている存在でした。
2代目の村瀬さんが海外に移住することが決まり、後任を探していたタイミングで僕に声をかけてくれました。
前職では事業やプロダクトの管理だけでなく、エンジニア組織をまとめる役割を担っていたので、離れることへの迷いはありました。でも、僕にとって村瀬さんは、エンジニアの道を志してからずっと憧れのような存在。
お声掛けを意気に感じましたし、僕がこれまで培ってきた技術組織の運営や、1から10を作り出すことに強みがある特徴が、これから事業拡大を見据えているNatureのフェーズにもマッチするかもしれない、とも感じました。また、当時社員数10名に満たない環境から、会社を作っていく経験ができるのは魅力でしたし、これまでのCTOを務めたお二人とは違った活躍ができるのではないかと思い、入社を決めました。
——Natureに入社する以前から、Natureのプロダクトのユーザーだったとお聞きしています。
そうなんです、『Nature Remo』は入社以前からユーザーとして使用していました。正直、事業として関わるのであれば、単なるスマートリモコン事業だけだとNatureに惹かれなかったかもしれません。
代表の塩出から、『Nature Remo』は将来的に家庭の電力の分散制御をするために作った、という話を聞きました。最終的には、「クリーンエネルギーが100%になるようなプラットホームを作りたい」という大きなビジョンを描いていて。電力は社会的意義も高いですし、人生をかけるに値する事業だな、と感じたことも入社の決め手の一つになりました。
——『Nature Remo』のプロダクトの魅力はどんなところにありますか?
使わない理由がないと思うくらい、『Nature Remo』は便利で僕も愛用しています。スマートスピーカーから操作ができるので、料理や皿洗いをしながらでもテレビを操作できますし、子どもを寝かしつける際に、声で電気を消灯することもできる。赤外線リモコンで操作できる機器は、どんなものでも操作できるという魅力があります。
Nature RemoはAPIをオープンにしているところに、エンジニア視点からみてのおもしろさがあると感じます。公開されているAPIを使えば、誰でもコマンドラインやターミナルを介して、PCの電源のオン・オフを操作できたり。拡張の余地があるのはエンジニアの人間にとっては嬉しい所で、機能性以外の魅力もあって愛用しています。
——メーカーのように、Natureは新しい製品をどんどん生み出されているところがおもしろいですね。開発をする上での、おもしろさや難しさはどんなところにありますか?
我々はハードウェアの会社だと思われることもあるのですが、Web技術に強みがあるソフトウェアの会社でもあります。常時20万台近くのハードウェアデバイスが、Goで書かれている我々のクラウドシステムに繋がっています。制御は決して簡単ではないですが、その難しさをおもしろみに感じてくれる人にとっては、チャレンジングな環境だと思います。
ものづくりをしていると、工場にも動いてもらうことになるので、締切がシビアな戦いになります。ハードウェア製品は、一度納品されると以降の品質の改善に時間を要するので、締切と相談しながら慎重に進める難しさがあります。
締切は意識しつつも、デバイス側のプログラムをシンプルにして、ソフトウェアで制御できるものを増やして、余裕を持ってスケジュールを調整できるような環境を整備してきました。サーバー側やアプリ側で制御できる余地を多くするアプローチを取ってきたことが、我々の優位性だと思っているので、このフローを洗練させることにこだわっています。
——デバイスはシンプルに、ソフトウェアでの制御にこだわる、これは技術を引っ張ってきた人がソフトウェア出身だから成り立った構造なのでしょうか?
代表の塩出も意識しているようで、CTOが僕に変わるタイミングでも、「CTOはソフトウェアエンジニアに!」というこだわりを持っていました。何でもソフトウェア化することを推奨することで、プロダクトを作るプロセスに変化を促し続けることが大事なポイントなんです。
アプリ開発ですと、毎週バグフィックスしたり、新たなバージョンを出したりしますが、旧来のメーカーだとそのような発想はなくて。プロダクトをリリースしたらそれでおしまい、というがこれまでのスタンダードだったと思うんです。
我々は、ユーザーさんに買ってもらった時が体験のボトムで、使用してもらってからの機能追加を惜しまない。ユーザーさんとの接点を保ちながら、エンゲージメントを上げることでファンになってもらい、次の製品を買ってもらえるようになる。Webの世界ではよくあるようなモデルを確立していきたいですね。
また、プロダクト思考であることを大事にしているので、我々社員は皆『Nature Remo』のユーザーなんです。使用していく中で、「自分ならこうしたい!」というクリエイターならではのこだわりも見えてくる。ユーザーが増えてくる中で、細かい体験を向上させるための実装は欠かさないので、そこに携われるのはおもしろいと思います。
今後は、機械学習のような機能を取り入れることも見据えています。『Nature Remo』にはセンサーも積んでいるので、室内の温度や湿度、照明の明度などの情報がひっきりなしに我々のシステムに上がってきます。このデータを活用して、家電を自動制御することにも取り組みたいですね。
あとは、無駄な電力消費を自動でカットするなどをはじめ、電力に関わる新規事業の計画は始まっています。
——Natureが実現しようとしている未来を聞かせてください。
弊社は、「自然との共生をテクノロジーでドライブする」というミッションを掲げています。自然の一部として、人間は地球を傷つけないようにエコを心がけながら、便利さも追求していく。自然との共生を目指して、両立を実現しようとする代表塩出の思いに共感しています。
実は電力の世界も、中央集権的に巨大な発電所をたくさん建てて分配していくモデルから、分散的にコントロールしていく動きにシフトし始めているんです。インターネットが発展してきた歴史にも似ていると思うんです。IoTの力を使って分散制御を行い、クリーンエネルギーへシフトしていくような事業にチャレンジしていきます。
——今後生み出していくプロダクトは、ミッションや分散制御の実現にどのように繋がっていくのですか?
主力製品である『Nature Remo』に続いて、昨年末に『Nature Remo E』を発売しました。家電の制御の役割を『Nature Remo』に担ってもらい、『Nature Remo E』は家の電力の使用状況をモニタリングし、節電に向けて分散制御できるIoTデバイスです。Natureのプロダクトを通じて、快適に自動制御をしながら電力消費を減らし、電気代が安くなることが環境へのエコに繋がっていくような世界を実現していきたいですね。
展望として、まずは『Nature Remo』と『Nature Remo E』を更にバージョンアップさせていくのが基本路線です。2020年の8月に『Nature Remo 3』をリリースしましたし、メーカーっぽく新製品をどんどん世の中に出していきたいです。家電などのモノが、インターネットに繋がることで拡がる可能性をここ数年実感しましたので、構想しているアイデアをどんどん形にしていくつもりです。
——知的好奇心が高い人にとって、常に新しい課題がやってくる環境は刺激的ですね。Natureの現在のチーム体制はどのような形でしょうか?
僕を含めてソフトウェアエンジニアが6名、ハードウェアエンジニアが2名、デザイナーが1名という開発体制です。ハードウェアに関しては、1名が回路設計のエンジニア、もう1名は機械設計のエンジニアです。
ソフトウェアは現在6名ですが、クラウドのシステムを見ないといけない上に、サーバーサイドはGoで書き、アプリをReact Nativeで作り、デバイスの組み込みをC言語で書いています。技術領域が広いので、あまり縦割りをせずに、それぞれのエンジニアにやりたい領域を選んでもらって、得意を活かして取り組めるようにしています。クラウドとGoの開発をする人もいれば、Goの開発とアプリをやる人もいる。垣根を設けずに、やりたい領域にチャレンジできるのが特徴ですね。
——どんなご経歴を持たれている方が、Natureにはいらっしゃるのでしょうか?Web業界からIoTにチャレンジするにあたって、持っておいた方がいい経験などがあれば教えてください。
典型的なパターンですと、電子工作が元々好きで、組み込みなどの技術分野に興味がある人が向いていると思います。でも実は、弊社にはそのような経歴がある人はむしろ少なくて、培ってきたWebの技術を応用して、電力やIoTの分野でチャレンジできる環境があります。
僕自身も、電子工作やハードウェアを扱ったことはないですが、この立場で仕事をさせてもらっています。今後ユーザーが爆発的に増えることが予想される中で、ソフトウェアのノウハウをいかにハードウェアの世界に持ち込めるかが勝負だと思っているので、大事なのはソフトウェアエンジニアの存在。
プロダクト志向であることを念頭に置きながら、各自が「プロフェッショナルな存在」であることを会社のカルチャーとして大事にしています。皆が自分のスキルに誇りを持っているからこそ、他のプロフェッショナルのスキルをリスペクトすることができると思うので。信頼をベースに、垣根を超えたチャレンジができるような環境にしています。
——ソフトウェア・ハードウェア側、双方をマネジメントしていくことは、日本ではまだ前例をあまり見ない印象なのですが、キャッチアップが大変なのでは?
社内の体制が少人数ですので、マメにコミュニケーションを取ることは心がけています。ハードウェアや工程管理をやってくれるメンバーがいますので、得意な人にマネジメントをお願いしています。ソフト・ハードならではの感覚の違いが生じることもありますので、キャッチアップの仕方は今でも試行錯誤しています。
コロナの影響もあって、工場の生産ラインの現場をあまり見ることができていない現状もあります。中国に工場があり、現場に出向くことができないためオンラインでコミュニケーションを取っています。社内・社外共に、コミュニケーションの質を向上させることは課題になります。
——コロナ禍により、働き方にも影響は出ていますか?
会社の体制としても、このご時世もあってメンバー各自へのフォローの在り方を考える機会が増えました。我々としては、オフィスに3Dプリンターなどの工作スペースがありますし、ユーザーさんから送られてくる故障品の検品対応なども必要になるので、できる限りオフィスに集まって仕事をしようという話になっています。
ただ、従業員の安全と健康が第一なので、テレワーク勤務を取り入れながら柔軟に対応しています。オフィスに出社する場合も体温管理やソーシャルディスタンスを確保して動いています。
——これから事業を拡大していくにあたり、どのようなエンジニアに来てほしいと考えているか聞かせてください。
先ほどもお話しました、プロダクト志向を持ちながら、プロフェッショナルであることに加えて、リーダーシップを取れるかどうかも大事なポイントだと思います。サーバーサイドとアプリのエンジニアは、特に採用に力を入れています。
今、20人規模の体制になろうとしていますが、これから仲間になってくれる人には、それぞれの場所で柱になってくれることを期待しています。次々に新しいチャレンジが進む中で、周りを巻き込みながら、プロダクト目線を持って課題解決へと導いてくれるような存在が仲間になってくれると嬉しいですね。
——松木さん、本日はありがとうございました!