株式会社マネーフォワードは、利用者数600万を超える自動家計簿・資産管理サービス「マネーフォワード」を開発・運営。ビジネス向けクラウドサービス「MFクラウドシリーズ」は、現在約2,700の会計事務所に導入されています。
マネーフォワードの組織づくりにおける考え方や求めるエンジニア像について、CTOの中出匠哉さんと採用・人事担当の井上玲さんにお話を伺いました。
―現在さまざまなサービスを展開されていますが、マネーフォワードではどのような基準で事業をつくられているのでしょうか?
中出:
今までもこれからも、マネーフォワードのValueのひとつである「User Focus」を追求する姿勢でサービスづくりをしていくという部分は変わらないと思っています。
これまでは国内で、自動家計簿などのBtoCのサービスや、MFクラウドシリーズなどのBtoBのサービスを展開してきましたが、より多くの方に使って頂くために、海外も選択肢のひとつに入れています。最近では、ブロックチェーンや仮想通貨のラボも立ち上げまして、送金や決済などのより多くの方にお使いいただける領域にも参入していきたいと考えています。
―マネーフォワードでは創業初期から1つに絞らず複数のサービスを展開されていますが、そういった戦略があったのでしょうか。
中出:
そのサービスに価値があってそこにマーケットがあり、ユーザーにとって価値があるだろうと判断できたら果敢にチャレンジした結果、そうなったということだと思います。
また、私たちは意思決定などがスムーズなスモールチームでの開発スタイルを大事にしていますが、現在は250人規模の会社なので、ひとつのプロダクトに全社で取り組むとなると、スモールチームでの開発にはなりません。
たくさんの開発チームで多くのプロダクトをつくり、その中でチームメンバーが責任を持って主体性を発揮し、ものづくりをしていくということも狙っています。
ー3年後や5年後に、どういったところを目指しているのか教えてください。
中出:
ひとつは、グローバルなビジネスを目指したいというのは強く思っています。そして、先ほどお話しした「MFブロックチェーン・仮想通貨ラボ」を立ち上げた目的でもありますが、「送金を1/10にする」ということを目指しています。
世の中ではいろんなものの管理等に、実は多くのお金がかかっていますよね。例えば、eメールも実際には企業がメールサーバーを管理したり、プロバイダに間借りしたり、といったことが行われていますが、みなさんはなんとなく無料で送れるというイメージを持っているのではないでしょうか。
いずれお金もそうなると想定していて、「送金でなぜお金を取られるの?」という世の中になると思っていますし、したいと考えています。
―今後も基本的には、お金に関する領域でチャレンジしていくのでしょうか?
中出:
そうですね。ユーザーからの期待には忠実でいたいので、今はお金に関する情報をアグリゲーションがサービスの中心となっていますが、もっと違った情報をアグリゲーションして欲しいという要望だったり、ユーザーにとって価値のある手段があれば、そちらを選択する可能性があると思います。
例えば、AIで融資審査をするとなった場合、経済的な資産のデータだけでなく、SNSでの人との繋がりやその他の活動なども、人の信用を判定する材料になりうると考えているので、そういったデータを収集する可能性はあると思います。
―普段からマネーフォワードの経営陣が重視しているのは、どのようなことでしょうか?
中出:
サービスが成功する上で、パッションやコミットメントが非常に大事だと考えています。メンバーが「こういうサービスを立ち上げたい」と経営陣に相談を持ちかけた時に、もちろんそれが本当にビジネスとして成り立つかというジャッジはありますが、その人のパッションも判断材料として重視している部分は大きいです。
―その熱意やコミットメントはどのように量っていますか?
中出:
やはりその人のこれまでの行動は見ていますね。やると言ったことにコミットメントしてきたかという、その人のクレジットは大事にしていますね。
それに、そういう人は何度も「こういうことがやりたい」と口にしていたりするので、そこに体制などのタイミングが合った時にスタートしているように思います。
―熱意の他にも求める要素はありますか?
中出:
ユーザーや社会が持っている課題に対しての興味や関心、想いですね。技術力はもちろん大事ではありますが、マネーフォワードにおいてはそういったところにある程度興味がないと、良いものをつくっていけないと思っています。
ですので私たちは、社会の仕組みや課題に対して、それを解決したいというモチベーションを持っているエンジニアを求めています。
井上:
実際に、経費精算のプロダクトを立ち上げたエンジニアがいるのですが、そのメンバーは自身が個人事業主として働いていた期間に、領収書の精算作業の煩雑さを身をもって体験し、それらを解決できるプロダクトが世の中には必要だという強い熱意から実現したという例もあります。
―先ほど挙がった、スモールチームとは具体的に何人くらいの規模をイメージされていますか?
中出:
エンジニア2人とデザイナー1人がいれば、まずはスタートできるだろうと考えています。そのうちエンジニアの1人は、プロダクトオーナーとしての動きをしてもらうことが前提になります。
―プロダクトの立ち上げは、やりたい人が手を挙げるのか、経営側から下りてくる形でスタートするか、どちらが多いですか?
中出:
どちらもありますね。プロダクトの立ち上げはこうでなければならない、といった決まりはありません。今まで立ち上げたプロダクトはほとんどの場合、最初はエンジニアがプロダクトオーナーになっていたケースが多いです。
ー組織づくりにおいて、どのようなことを意識されていますか?
中出:
スモールチーム、そしてスモールカンパニーを意識しています。やはり会社が大きくなるほどに、一人ひとりが自身の活躍を実感できる度合いが薄れてしまうので、チームもなるべく小さく、できれば会社もある程度の規模を超えたら2つに割るような、適切なサイズを維持することを心がけています。
ただ、プロダクトと異なり会社を適切なサイズで維持するためには、例えばグループ会社等の社長となれる人材が必要になってきます。そういう意味では、将来的にそういったポジションを目指すことができる会社でもあります。
―子会社なども増え、組織や関わる人が多様化する中で取り組んでいることはありますか?
中出:
基本的に、それぞれのスモールチームの中での開発手法や使う技術は、そのチームに選択の自由があると考えています。チームやプロダクトによってステージがあって、扱うべき技術も課題も異なると思うので、自分たちが良いと思うもの、ユーザーにとっても最適だと判断したものを使うべきだと思っています。なので、グループ会社に対しても同じスタンスです。
―技術的な課題やチャレンジをしているポイントについて教えてください。
中出:
家計簿サービスなどでは、たくさんの方にご利用いただき、集まってきたデータが非常に大きなボリュームになっています。それらを今後どういった形ユーザーのみなさまに価値を還元していくのかということや拡大し続けるサービスでキャパシティと品質を維持するところが技術的に苦労している部分かなと思います。
―キャパシティの維持などを考えると、スモールチームではない編成もできてくるのでしょうか?
中出:
よりスケールアウトしやすい仕組みにするために、アーキテクチャの一部を変えているのですが、スモールチームでは対応できないので、CTO室の中にプロジェクトチームを作っています。
基本的には、エンジニアにはプロダクトを前に進めるために時間を使ってほしいのですが、とは言えやらなければいけない技術的な課題解決もあるので、現状は横串組織でフォローするプロジェクトをつくって解決するというやり方をしています。
―エンジニアとビジネスサイドのメンバーとは、どのような関わり方をしていますか?
中出:
例えば家計簿サービスには、開発チームの中にマーケティングのメンバーがいます。CS(カスタマーサポート)チームは違う組織ではありますが、エンジニア島の隣に配置しており、エンジニアが日替わりの当番制でCSからの問い合わせ対応をする取り組みをしています。エンジニアとCSメンバーがフラットに話すことができるような、風通しが良い状況というのは絶対に必要だと考えています。
―中出さん自身は、将来的に例えば事業部長をやりたいといった気持ちもありますか?
中出:
それはありますね。今はほとんどプログラムを書いたりはしませんが、またプレイヤー側にまわりたいという欲求は常にあります。
会社が大きくなっていく中で私が今、想像できてないことを知っているような、組織を大きくしてきた実績や知見のある方がいれば、その人に次を任せられればと考えています。
井上:
もともと就任当初から、会社のステージに合った人がCTOをやればいいと言っていましたよね。
中出:
そうなんです。いつでも、この会社を上のステージに引っ張れる人がいるのであれば、その人がやるべきだという気持ちがあります。
―エンジニア組織の人数も増えてきているとのことですが、CTOとして大切だと考えていることを教えてください。
中出:
各プロダクトのスピードが最大化できるように、その人たちが一番パフォーマンスを発揮できる組織を作っていくことが大切だと思っています。
それから、やはり海外に出ていくというのはすごく意識していて、その準備をしています。例えば、まずは私が所管しているCTO室のメンバーの外国籍比率を50%程度まで上げたいと考えていて、外国籍の方をどんどん採用しています。
―マネーフォワードでは、どのようなエンジニアを求めているか教えてください。
中出:
サービス志向かつユーザー志向で、私たちのカルチャーに共感できるかどうかは重視しています。自分の作ったプロダクトが世の中の役に立って、そこに喜びを感じるモチベーションのエンジニアにぜひ来てもらいたいと思っていますね。その上で、プロダクトオーナーになれるような人も強く求めています。
それから、ブロックチェーン関連の課題解決をしたい人にも来て欲しいですね。送金が1/10になる世界を実現していくにあたって、さまざまな技術的課題がある中で、それを一緒に解決していきたいというマインドを持った人も求めています。
―自身のキャリアについて悩んでいるエンジニアも多いと感じるのですが、そういった人に向けて何かアドバイスはありますか?
中出:
エンジニアの能力の中でもプログラミングは、スポーツに例えるなら瞬発系の競技のようなものだと私は思っています。若い人でもセンスがあれば一気にスキルを高めることができて、力を発揮できるのがプログラミングだなと。
ただ、エンジニアの仕事というのは、プログラミングだけではなく設計などいろいろな面があるので、そこは経験が活きてくると思うんです。アスリートにおじさんがいないように、最新の技術で勝負し続けることよりも、より経験で勝負できるところに移って行った方がいいと思います。
―実際にFindyを利用して頂いた感想を教えてください。
井上:
お互い気軽にマッチングして、コミュニケーションを取り始められるところがすごく良いと感じています。メッセージを送るタイプのスカウトも利用していますが、心を込めたメッセージを送らなければ意味がないと思っているので、そうするとやはり1日に送れる通数は限られてきます。
一方で、Findyさんは気軽なコミュニケーションをフックに面談や選考に進んでいける空気感があって、出会いを増やしていける良い手段だなというのが率直な感想ですね。実際に、採用にも繋がっています。