ハイスキルなエンジニアと企業をマッチングする転職サービス「Findy」を運用するファインディ株式会社。2016年7月に創業されたファインディは、3年目を迎えています。
今回は、ファインディの立ち上げメンバーであるCTOの佐藤将高さんにインタビュー。立ち上げの経緯から今に至るまで、そしてエンジニアチームの現在と目指す姿について、お話をうかがっていきます。
佐藤 将高・取締役 CTO
東京大学 情報理工学系研究科 創造情報学専攻(*)卒業後、グリーに入社し、フルスタックエンジニアとして勤務する。2016年6月にファインディ立上げに伴い取締役CTO就任。
*大学院では、稲葉真理研究室に所属。過去10年分の論文に対し論文間の類似度を、自然言語処理やデータマイニングにより内容の解析を定量的・定性的に行うことで算出する論文を執筆。
――まずは、ファインディ立ち上げに至るまでの経緯を教えてください。
2013年にグリー株式会社へ新卒で入社して、エンジニアとしてキャリアをスタートしました。
元々、現ファインディ代表の山田とは、僕がレアジョブのアルバイトとして2011年頃在籍していた時に一緒にフィリピンに出張に行ったのがきっかけで仲良くなりました。ほとんど一緒に仕事をしたことがなかったんですが、その出張の休暇でフィリピンの秘境を二人で見に行ったんですよね(笑)。それから年一回くらい何かしらで接点を持ち続けていたんです。
そして、ちょうど3年ほど経った2016年頃、改めて山田と何度か話す機会があり、その時に「日本・海外ではこんなサービスや考え方があって人材領域は面白い」「一緒に起業しないか」と熱弁されてたんです。
実は、僕の父と祖父が起業家だったんです。だから、自分も社長になるんだろうと昔から漠然と思っていたんですけど、山田と一緒にやるなら自分は社長じゃなくてもいいなと。それくらい優秀で信頼できる人だと思ったので、「山田さんが誘ってくれるなら、僕もやります」と、すぐに返事をしました。それがファインディ立ち上げに携わる最初のきっかけです。
――山田さんからの話を聞いて、強く共感される部分があったのでしょうか?
採用が上手くいかず困っている会社が多いのは、求人票が上手く書けていないからではないか?という仮説を山田から聞いたんです。それは、僕もすごく共感できるなと。
エンジニアとしていろんな会社の求人票を見ていると、すごく面白そうで自分のやりたいことが明確にイメージできる会社もある一方で、良い会社なのに「バックエンドエンジニア募集!PHPができる人歓迎!」といった内容しか書いていない会社もあったりして、かなり温度差があると感じていました。
それを解決しようということで、僕らの考える良い求人票とは?というノウハウを込めたサービスを作りました。そうして生まれたのが、ファインディ最初のプロダクトであるAI求人票採点サービス「Findy Score」です。
――ファインディの立ち上げ以降、どのような形で事業に携わってきましたか?
最初は「Findy Score」のエンジニアリング部分を、すべて僕が見ていました。ただ、リリースはしたものの、1年目は全然売り上げが立たず。2年目には、2つ目のプロダクトとなる中途向けのエンジニア転職サービス「Findy」を作ることになりました。
「Findy」では、プロダクト責任者として開発のディレクションをしつつ、プロダクトの方向性を考え、どうしたらユーザーの方に認知して使ってもらえるか、といったところまで含めて試行錯誤していました。
そして、2年目の後半から3年目にかけて、フリーランス・副業エンジニアと企業の業務委託案件をマッチングするサービス「Findy Freelance」を立ち上げることになります。このサービスでは、新たな事業をつくっていくにあたり、KPI設計や売り上げ構成を考え、事業計画を立てるところから任されていました。
その頃は、メンバーが増えてきたタイミングでもあったので、きちんと売り上げを作らなければいけなくて。エンジニア出身の自分としてはわからないことばかりで、いろんな方のフィードバックを受けながら進めてきました。
今ちょうど3年ほど経って、またさらに新しいことにチャレンジしています。2019年前半は営業の仕事をしていたのですが、後半は組織を拡大していくにあたって採用にコミットし、エンジニアリング以外にも領域を広げてきました。
現在は2020年にリリースする新規事業を作るためにプロダクト開発・事業開発に尽力しています。
――ファインディが展開するサービスの魅力について教えてください。
単に転職サービスを提供するわけではなく、情報を可視化するだけでもなく、独自のアルゴリズムを使って実現しているところが、ファインディのサービスの面白いところだと思っています。
例えば、エンジニアのスキルを定量的に表す「スキル偏差値」をサービス上で提供しています。エンジニアにとって、自分にどの程度スキルがあるのかということは、あくまで自身の感覚であったり、会社の上司とのコミュニケーション、面接や面談の場などでしか測りきれていません。これはエンジニアがキャリアを作っていく上での、1つの課題になっていると思います。
「スキル偏差値」では、GitHubでどれくらいコミットできる人なのか、他者からどれくらい支持されているか、対外的にどれくらい技術的に貢献しているか、などを解析することで、自身の市場価値を定量的に示します。
これによって、自分がどの立ち位置にいるか、その域にはどれくらいの人がいるか、などがわかります。さらに、偏差値を5上げるためにはどうしたらいいか、といった指標にもなるのが「スキル偏差値」のメリットです。
また、”偏差値”といえば、誰もが学生時代に触れてきたもの。エンジニア自身に限らず、技術に関する詳しい知識を持っていない採用担当の方でも「スキル偏差値」を見れば、そのエンジニアがどの程度のスキルを持っているのか理解しやすくなるというメリットもあります。
このように、エンジニアにとってもエンジニアを採用したい担当者にとっても、双方にメリットがあるサービスをアルゴリズムによって実現しているところが、ファインディならではの強みだと考えています。
――現在のエンジニアチームの体制について教えてください。
「Findy」と「Findy Freelance」の2つの事業に対して、プロダクト開発チームが1つずつあります。それぞれのチームにフルタイムのエンジニアが1人ずついて、副業・フリーランスのエンジニアが合計で10名ほど。
フルタイムのメンバーは、プロダクトの方向性を考えながら事業にコミットしていき、副業・フリーランスのメンバーは、良い技術を使って質の高いプロダクトを作るためにスキルにコミットする、というそれぞれの役割を担っています。
――エンジニアチームを作っていく上で意識していることはありますか?
今は中途向けの転職サービス「Findy」を中心に、サービスを強化している段階です。利用いただいているユーザーさんや企業の方々からの改善要望にも応えつつ、攻めの開発をしていきたいなと。
単なる転職サービスを作っていると思われがちなのですが、エンジニアがより良いキャリアを築いていくために、そして採用担当の方が求めるエンジニアに巡り会えるようにするために、今までにないプロダクトにしていく必要があります。
なので、エンジニア自身がどのようなプロダクトにするべきか、意志を持って開発を進めていける環境を作りたいと考えています。
――中長期的には、どのようなエンジニアチームを作っていきたいと考えていますか?
「Findy」では、エンジニア向け転職サービスとしての側面だけでなく、スキルを可視化して、エンジニアが自身のスキルを確認するために、毎月訪れたくなるようなサービス設計にしています。
今後も、エンジニアのユーザーに飽きることなくサービスに訪れてもらうためには、何かしらの面白い機能が毎月出ているのが理想的です。なので、1つのプロダクトに対して複数のチームを作って、例えば1つのチームが偶数月に、もう1つのチームが奇数月にという形で、常に新たな機能を出していける体制を目指したいと考えています。
――エンジニアチームの技術スタックを教えてください。
フロントエンドがReact、Reduxで構成されていて、バックエンドがRuby on Rails、インフラまわりはAWSやDockerという、わりとモダンな開発環境だと思います。
――エンジニアチームとして、今後どのようなことに取り組んでいきたいと考えていますか?
現在、サービス内でGitHubの活動を可視化していますが、次に取り組んでいきたいのは、GitHub上でまだ見えていない部分や、自分のスキルがどうしたら伸びるのかなどをサービス上で表現していくこと。エンジニアが楽しみながら自分のスキルを上げ、次のキャリアを作っていくために、もっと情報提供できるサービスにしていきたいと思っています。
――エンジニアチームにおける課題はありますか?
今のところ、技術的な面での無理難題はないですね。というのも優秀なメンバーが多く、難しい局面でも技術的な解決を常に行ってきていたためです。しかしながら、やりたいけども着手できていない施策がわんさかある事が課題ではあります。その他にも、いろいろな業務形態のメンバーと一緒に開発を進めていくという組織的な難しさや、世の中にないアルゴリズムはあると思います。
――エンジニアにとって面白さを感じるのは、どんなところでしょうか?
まずは、エンジニア向けのサービスなので、自分の興味のある領域に対してコミットできることですね。自分自身が欲しいと思うものをサービスに落とし込んでいく、という面白さがあります。
また、エンジニアが主体となって事業を成長させていくという考えのもと、サービスに関する意思決定もトップダウンではなく、メンバーに権限を渡しています。そのため、自分たちで意思決定しながらサービス開発を進めていくことができます。
それから、ファインディで働く副業・フリーランスのエンジニアメンバーは、テックリードクラスの優秀な人たちばかり。高い技術力を持つメンバーと一緒に働くことができるというのは、エンジニアにとって大きな魅力だと思います。
技術的な面では特に課題がないというのは、優秀なメンバーが集まっているからこそでもあります。技術的な難しさよりも、むしろビジネス的な意思決定に難しさを感じる場面があるというのも、面白さの1つだと思います。
――ビジネスサイドのメンバーとエンジニアの関わり方において、意識されていることはありますか?
フルタイムで働くビジネスサイドのメンバーは、ファインディに入社する段階でエンジニアスクールなどを活用して、自身でも何かしらのサービスをプログラミングできるようにする取り組みをしています。
ビジネスサイドのメンバーも、きちんと基礎的なエンジニアリングの知識を持つことで、エンジニアともスムーズにやり取りできる環境をつくっています。
――佐藤さん自身が、エンジニアメンバーと接する際に意識していることがあれば教えてください。
エンジニアがエンジニアリング以外の領域にもチャレンジしていけるように、僕自身がロールモデルの1つとなって、ノウハウを共有していける存在でありたいと思っています。
僕が最初に思い描いていたエンジニアのキャリアというと、エンジニアマネージャー、テックリード、もしくはCTO。この3つくらいでした。でも、実際にはエンジニアのキャリアってもっとあるはずなんです。具体的に言えば、自ら事業を作っていく事業部長になるという道が、まだ一般的にはエンジニアのキャリアとしてあまりメジャーになっていないと感じます。
意識せずともやっている方はいると思うんですが、僕らの会社では明確に、エンジニアがプロダクトを見ていく、さらには売り上げにも責任を持つ、というキャリアの作り方を意識しています。僕自身がエンジニア以外の仕事にも多くチャレンジしてきたように、そういったキャリアを歩みたいと考えているエンジニアを応援したいと思っています。
――どんなエンジニアと一緒に働きたいと考えていますか?
今いるメンバーは、エンジニアがキャリアに対して抱える悩みを解決したいなど、ファインディのサービスに興味を持ってジョインしてくれています。今後もそういったマインドを持っている方に、ぜひ来ていただきたいなと。
逆に、スキル面に関しては、100%フィットしている必要はないと考えています。好きなことや興味があることに対しては自ずとキャッチアップしたくなるものだと思うので、僕らのビジョンやサービスに共感してくださるとか、人材領域に興味があるとか、そういった方であればウェルカムです。
――最後に、ファインディに興味を持っているエンジニアに向けてメッセージをお願いします。
ファインディでは、僕たち自身がエンジニアの新しい働き方を体現していきたいと考えています。エンジニアの働き方って、必ずしも週5フルタイムでなくともいいと思っているんですよ。
優秀なエンジニアであれば、週に3日働いて週5フルタイム相当のタスクをこなしてしまう方もいます。なので、週3や週4で社員として働きながら、その残りの時間で、例えば自分の好きなOSSにコミットしたり、大学院に通ったり。リモートワークの方が自分にとってもチームメンバーにとっても成果がより一層出るのであればリモートワークで勤務してもいいんじゃないかと思っています。多種多様な働き方がある中で、ファインディとしても様々な働き方があってもいいと思っています。
エンジニアの働き方について伝えていくだけでなく、僕たち自身が新しい働き方を実践していきたいと考えているので、そういった点でも興味を持ってくださった方は、ぜひ一度お話できればと思います。