急成長するPayPayを支える”縁の下の力持ち”ーエンタープライズシステム開発エンジニアの仕事とは

2018年10月にサービスが開始された「PayPay」は、わずか2年6ヶ月でユーザー数3,803万人(2021年3月末時点)を突破。キャッシュレス決済をベースに、幅広いサービスへ展開することによって事業を急成長させています。

今回は、PayPay株式会社でエンタープライズエンジニアリング部の部長を務める、岡田寛史さんにインタビュー。PayPayを裏方として支えるエンタープライズシステム開発エンジニアが、社内で担っている役割や求められるスキルなどについて、お話を伺いました。

PayPay株式会社
コーポレート統括本部 経営推進本部 エンタープライズエンジニアリング部 部長
岡田寛史さん

部長としてジョインし、1年半で6人から30人強の部へ

ーーまず最初に、岡田さんのこれまでのご経歴や入社のきっかけを教えてください。

僕は新卒でITコンサル会社に入って、業務系システムのプログラマーを2~3年ほど経験し、その後、設計やプロジェクト管理などもやっていました。その後、経営の全体像を知りたいと思い、MBA留学のため海外へ。帰ってきてから開発会社を起業して、イグジットしています。それから数社を経てモバイルゲーム企業に入社し、8年ほど在籍して、最終的には情報システム部長をやりつつ、エンジニア組織を横断管理する開発企画部の部長も兼務していました。

PayPayへの入社は、偶然エージェントさんから声を掛けていただいたのがきっかけで、「フィンテック領域で、ヤフーを超えるようなネット企業をもう一度創る」という言葉に惹かれて、ほとんど他に転職活動はせず、入社することを決めました。

ーー当初から、エンタープライズエンジニアリング部に入られたのでしょうか?

はい、今の部に部長職として入りました。ただ、1年半前は社内のIT基盤を管理するチームが1つあっただけで、メンバーも6名ほどでしたね。

もともと普通の情報システム部長をやるのは、あまり面白くないし転職する意味もないと思っていました。PayPayはフィンテック企業で、かつCTOが外国人でメンバーもグローバルなエンジニア組織。一方で、全国20箇所の営業拠点があり、営業社員も数多く在籍する組織なので、僕が入ることで貢献できるところも少なからずあるんじゃないかと思って。入ってみたら、実際にそうした面が多くありました。

入社した当時は、まだ会社としてのインフラが全然整っていなかったので、まずはいわゆる情報システム部を作ろうと。そして、PayPayならではのプロダクトに関連する部分や、会社として弱かったエンタープライズ領域のシステムの部分など、領域を少しずつ広げて今の体制になりました。

ーー現在、部には何人くらいのエンジニアの方がいらっしゃるのでしょうか。

今は30人強くらいです。この1年半で、6人から今の人数になりました。

ーー業務の領域を広げながら、それに応じて人数も増えていったということですね。

そうです。プロダクト側も新しいサービスの開発をどんどん進めているので、慢性的にリソースが足りていません。ただ、新しいサービスが生まれる時って、その後ろでさまざまなオペレーションが紐づきますよね。

例えば、最終的に経理にどうデータを渡すのか、営業からどうデータを取ってくるのかとか。そういったところが全然追いついていなかったので、そこを埋めるために守備範囲を広げてきました。

部を構成する5つのチーム、それぞれの役割とは?

ーーエンタープライズエンジニアリング部の体制について教えてください。

現在は、5チーム体制になっています。まず、開発1と呼ばれているチームは、会計や人事などコーポレート系のシステムを担当しています。

開発2は、いろいろなシステムをフルスクラッチで作っていくチーム。例えば今作っているのは、審査プロセスを効率化するシステムや加盟店の与信を管理するシステムなどです。今までオペレーションをマニュアル作業でやっていた部分も大きかったのですが、今後大きく加盟店さんを増やしたり、新規サービスの利用者を増やしていくにあたり、受け入れ時に数万という事務手続きを効率化することが必要です。そういったフィンテック企業ならではのオペレーション効率化のためのシステムを作っていたりします。

開発3は、営業プロセス管理やサポートシステムの開発・運用を行うチーム。開発4は社内IT基盤を管理・運用するチームで、SlackやGoogle Workspace、ConfluenceやAsanaなど全社で使うクラウドサービスや、全国20ヶ所ある拠点のインフラの構築・運用を行っています。開発5は、部全体のIT戦略やITガバナンスを担当するチームです。

ーーそれぞれの開発チームごとにリーダーの方がいらっしゃるのでしょうか?

5チーム中、専任リーダーは2人で、残りのチームは兼務となっています。

ーー部に所属されているエンジニアは、どういったご経歴の方が多いですか?

一番多いのは、事業会社で開発業務に携わっていた方ですね。開発2チームでは、Javaによるフルスクラッチ開発が中心なので、事業会社のプロダクト部門で開発をしていた方やSIerで顧客企業向けに開発をしていた方などが多かったりします。

ーー企画から開発まで、基本的にはどのようなフローで行われていますか?

例えば、今PayPayクーポンやPayPay証券などのサービスがありますが、そういった新しいビジネスプランやサービスの企画案を、事業開発にあたるメンバーが持ってきます。それを経営会議で共有した上で、サービスを実現するために必要な機能を部署ごとに分解し、一連の役割分担が決まったら、プロジェクトとして一気に横串で動いていきます。

新しいサービス以外にも、先ほど例に挙げたような審査プロセスを効率化する企画であれば、オペレーションを担っている部隊から上がってきます。なので、企画が上がってくる部署はさまざまですね。

ーー内容としては、例に挙げていただいたPayPayクーポンなどのような、新たなサービスに関連するところも多いのですね。

そうですね。今は会社として、ユーザー獲得がかなり進んできたので、次はどうマネタイズするかというフェーズに入っています。「PayPay」は決済手数料だけで稼ぐのではなく、スーパーアプリ化して複合的に収益化を目指すビジネスモデル。なので今、土台はできつつあるので、その上に乗るマネタイズの仕組みを一気に増やしていこうとしています。


昨年移転された神谷町オフィス。新しい働き方・生活様式に沿った設計となっている。完全フルリモート勤務が前提であるがチームビルディングや研修などの際には使用される。

急成長サービスの一翼を担う実感が、大きなやりがいに

ーーエンタープライズシステムの開発に携わる上で、やりがいや面白さを感じる部分について教えてください。

事業が今ものすごく伸びていて、ユーザーもかなり増えていますから、やはり自分が作っているシステムがサービスの一翼を担っていると実感する時に、一番やりがいを感じます。

例を挙げるなら、PayPayクーポンがその1つですね。PayPayクーポンというのは、アプリからユーザーが割引クーポンを獲得できるものですが、今PayPayクーポンをやっているのは、300万店舗ある加盟店のうち、ほんの一部です。

でも、将来的にはもっと町のラーメン屋さんとか八百屋さんのような個店にも、クーポンシステムをどんどん活用してもらいたいと考えています。それを実現するために必要な裏側のシステムを開発しています。それができれば、自分がよく使うお店が自分たちの好きなタイミングで、好きな内容のクーポンを発行できるようになる。これってすごく夢が膨らみますよね。

今コロナの影響で飲食店や小売店の方々が苦労されていますが、「PayPay」を通じて加盟店さんに貢献できるというのは、大きなやりがいの1つです。また、地方自治体との取り組みも強化していて、「○○市の対象店舗で買い物をしたら○○%のPayPayボーナス付与」といった、地域経済の活性化を促すキャンペーンも実施しています。こういった取り組みに関われるのもやりがいを感じられるところだと思いますね。

エンタープライズシステムの開発で、求められるスキルとは

ーーPayPayは外国人エンジニアの方も多く、非常に技術力が高いイメージがあります。エンタープライズシステムの開発においては、どういったスキルが要求されるのでしょうか?

グローバルで採用しているプロダクトチームは、非常に技術力の高いエンジニアが揃っています。ただ、僕らが同じように、特定の領域のトップオブトップのエンジニアだけを求めているかというと、それは少し違っていて。僕らの部では、社内の様々な部門の要件を聞いてそれを着実に実装できるコミュニケーション能力が重要なので、よりフルスタックで複数の技術分野や開発工程を手掛けていただけるユーティリティプレイヤーを求めています。

ーーエンジニアとしての技術力だけでなく、より幅広いスキルが求められていると。

場合によっては、PMスキルの方が求められたりもしますね。僕らの領域は、何msの応答性能や、数千万ユーザーアクセスによるスケーラビリティや耐障害性が求められる大規模システムよりも、複数の要求部門が求める細かい仕様をきちんとシステム設計に落とし込んでシステムやオペレーションに落としこめることの方が大事になってきます。

ーーいろいろな部署から上がってくる要望を、開発に落とし込んでいく能力が重要だということですね。

そうです。弊社の特徴でもあるのですが、どの部のエンジニアも優秀かつ誠実なんです。採用の段階で、かなり人間性を見ていると思いますね。チャレンジしたくて前向きな転職をしようとしている人、素直でエンジニアとして技術に真摯に向き合っている人に来てほしいと思っています。

ーー現在所属されているエンジニアは、どれくらいの年齢層の方が多いですか?

今まではとにかく人が足りず即戦力を求めていたので、30歳前後のエンジニアが多いですね。最近は、少しずつ若手も入ってくれるようになってきました。

今後見据えているグローバル展開に携わるチャンスも

ーーエンタープライズシステム開発エンジニアの次のキャリアパスとしては、どういった選択肢が考えられるでしょうか。例えば、社内でプロダクトチームに移るなど、そういったチャンスもありますか?

全然あると思います。業務で関わることも多いですし、特定の領域でやってみたいという希望があれば、異動の選択肢もあります。これからはグローバル展開も見据えてやっていきますから、本当にいろんな可能性があると思いますね。

ーー岡田さん個人として、今後実現したいと考えていることはありますか?

「PayPay」はこの1年でずいぶん成長しましたが、現金のシェアにはまだまだ及びません。現金を塗り替えるくらい生活の中に「PayPay」が根付いて、いろんなものが非接触で便利に買える世の中になるといいなと思っています。

ただ、僕がその先にやりたいと思っているのは、やはりグローバル展開です。ヤフーとLINEが経営統合し、海外拠点との連携もできるようになったので、東南アジアなどを含め、5年くらいかけて「PayPay」というブランドやサービスを日本から世界に広げていきたい、というのが今後の目標です。

ーーそれでは最後に、興味を持っていただいているエンジニアの方へ向けて、一言いただけますでしょうか。

PayPayで働く人は国籍やバックグラウンドも様々ですが、シンプルにフィンテック企業として世の中を変えたいと本気で思っている人が集まっています。どんな領域でも構わないので少しでも腕に自信のある方、その想いに少しでも共感できる方は、ぜひご応募していただければと思います。

ーー岡田さん、本日はありがとうございました!