アルゴリズム開発だけではないーPKSHA Technologyで成長するエンジニアが大事にする価値観とは

2012年、日本のAI研究をリードする東京大学の松尾研究室出身の上野山 勝也氏によって創業された株式会社PKSHA Technology(パークシャ・テクノロジー)。

機械学習や深層学習を用いた機能特化型のアルゴリズムモジュールを提供するソリューション事業や、アルゴリズムをベースにしたSaaS型ソフトウェアプロダクトの事業を展開しています。

同社は、アカデミック領域で高い専門性を持つメンバーが多数在籍し、その技術力の高さでアルゴリズム領域をリードする企業として立場を確立。

創業以来黒字経営を続け、2017年には東証マザーズに上場を果たし、トヨタ自動車、NTTドコモ、LINE、リクルートホールディングスといった業界を代表する企業との提携などでも注目を集めています。

アルゴリズム開発の技術的側面が注目される企業ですが、同社には個人の習慣が企業を作ることを示す3つのバリューを大切にしています。

「Be proactive for the future(未来に先回りし、ポジティブな業界進化を仕掛ける)」
「Credit cycle for building network Intelligence(信頼のうねりを外界に作り出し信頼のハブになる)」
「Learning machine for multi specialty(相互作用(=専門性の連鎖)を通じ、自らをアップデートし続ける)」

今回は、PKSHA Technologyでエンジニアマネージャーを務める三村裕介さんに、3つのバリューから紐解きながら、PKSHA Technologyのミッションや仕事のやりがい、求めるエンジニア像についてお聞きしました。


Algorithm Solution事業本部
Developers
EM
三村 裕介

大学では農学部で稲の変異体を使った研究に従事。卒業後、2009年にDeNAに新卒入社し、エンジニアリングはまったくの未経験ながらインフラ部門に配属される。toC向けの高トラフィックサービスの安定稼働の仕組みづくりや環境整備を経験。その後、2019年にPKSHA Technologyに入社。現在は、アルゴリズムを用いたサービス提供のための、バックエンドの設計や開発、インフラの構築、ネイティブアプリの一部開発に携わりながら、マネジメントを担う。アルゴリズム以外の全てを担当できることにやりがいを感じている。

「Be proactive for the future(未来に先回りし、ポジティブな業界進化を仕掛ける)」

──今日はよろしくお願いします。早速ですが、元々DeNAにいらっしゃって、なぜ転職を考えられたのですか。

三村:
DeNAで7年間インフラエンジニアとして働き、ある程度やり切った感覚がありました。次はエンジニアとして、インフラ以外にも領域を広げた挑戦がしたかったんです。
当時、社内異動の手段もあったと思います。ただ、もう少し小規模なカオスな組織で働いてみたいという気持ちが強かった。

それに、未来がワクワクするような仕組みを社会に対して提供していきたい、という気持ちがありました。

──AI開発を手掛ける企業は多くある中で、なぜPKSHA Technologyへの入社を選んだのですか。

三村:
確かにAIベンチャーは、ここ数年で急速に増えていますね。その中で、PKSHA Technologyは自然言語や映像認識などマルチモデルに展開し、さらに、アルゴリズムという全く新しい事業領域にもかかわらず、創業時から黒字で事業を順調に拡大させていることに興味が沸きました。

AIベンチャーが上場していること自体珍しいですし、その成長の理由を実際に中の人として見てみたい、体感してみたいという好奇心が最初の動機です。

ただ1番の理由は、インフラエンジニアだから「インフラだけをやればいい」という働き方ではなく、自分の希望次第で業務の幅を広げていけることに魅力を感じた点です。

面接で正直に「コードを書いたのはスクリプト程度です。それでも色々なことをやっていきたいんです。」とワガママを伝えたのですが、問題ないと言ってくれました。インフラ周りの強みを大事にしつつ、伸ばしたい領域にもチャレンジしてマルチに成長できる環境だよ、と言ってもらったのは嬉しかったですね。

──やりたいことを実現できる環境だったんですね。実際、入社してみていかがですか。

三村:
想像通りで、入社してからエンジニアとしてスキルの幅が本当に広がりましたね。入社前は、コードの監視ツールやスクリプトを書く程度の経験しかありませんでした。

今はアプリケーションやフロントの開発にも携われているので、刺激的な環境で働けていると日々感じています。

未来のソフトウェアを形にする

──PKSHA Technologyのミッションについて教えてください。

三村:
PKSHA Technologyは「未来のソフトウェアを形にする」をミッションに掲げ、アルゴリズムの力で社会課題の解決を目指しています。

事業内容は、自然言語処理、画像認識、機械学習/深層学習技術に関わるアルゴリズムソリューションを自社開発し、お客様にライセンスとして提供しています。

アルゴリズムの具体的な用途は多種多様ですが、一例としてチャットアプリの自動対話や、クレジットカードの不正利用の検知などがイメージしやすいかと思います。

──バリューについても教えていただけますか。

三村:
バリューは3つあります。
それぞれ「A for B」という構図になっているのですが、特にBの後半の部分がPKSHA Technologyらしさを表現しています。

一つ目が「Be proactive for the future(未来に先回りし、ポジティブな業界進化を仕掛ける)」。

二つ目が「Credit cycle for building network Intelligence(信頼のうねりを外界に作り出し信頼のハブになる)」。これができると、更に色々な企業と協力することができるので、実現したい未来へのアプローチを加速させることができます。

三つ目が「Learning machine for multi specialty(相互作用(=専門性の連鎖)を通じ、自らをアップデートし続ける)」です。

──事業の担当フェーズを、3つの「Layer(層)」で表現しているそうですね。

三村:
そうなんです。「Layer0」では、いわゆるR&Dの領域で、機械学習における自然言語処理、画像や音声の研究等を実施してアルゴリズムモジュールを磨き上げる役割を担っています。

「Layer1」では、その磨き上げたモジュールを活用して、さまざまな企業やドメインに展開できるニーズを探索しています。単独のモジュールだけではなく、複数のモジュールを組み合わせることでドメインに刺さるかなどの探索もしています。

「Layer2」では、「Layer1」で得たデータを分析して、共通化・展開できる見通しが経った部分をプロダクト化しています。

いまは、各Layerの強化はもちろんですが、Layer同士のシナジーを更に高めていきたいと考えています。

「Credit cycle for building network Intelligence(信頼のうねりを外界に作り出し信頼のハブになる)」

──具体的には、どのようなプロジェクトが動いているのですか。

三村:
例えば、クレディセゾンやジャックスなどと提携して、アルゴリズムを活用したクレジットカードの不正検知システムを提供しています。今はそれを他企業へ横展開できるような仕組みづくりにも取り組んでいますね。

他には、2年前に駐車場機器ソリューションの会社であるアイテックがグループ企業となり、そちらのアセットを元にスマートパーキング化を進めています。私たちが、従来の駐車場システムに対してアルゴリズムやソフトウェア部分の付加価値を提供することで、機器がより一層販売拡大し、結果としてより多くのデータを活用できるようになり、提供できるサービス品質の向上や、潜在的な事業展開の可能性が拡大する、という良い循環が生まれ始めています。

失敗を無駄にしないオープンカルチャー

──PKSHA Technologyのエンジニア組織についてお伺いさせてください。三村さんが所属する組織はどのようなチーム構成になりますか。

三村:
私が所属している組織は、先ほど申し上げたLayer1とLayer2を担う横断部隊のようなイメージを持っていただけると、分かりやすいと思います。

Layer1として、2つチームがあって、1つはアルゴリズムを活用したソリューションを提供するチームです。先ほどご紹介した「クレディセゾンの案件」という形で、顧客から依頼を頂き、要件定義から始まり、ビジネスサイドやアルゴリズムエンジニアとも密に連携しながら、設計や開発を実行していきます。

例えば、ベネッセコーポレーションと提携して「AI StLike」という学習アプリの出題問題を最適化するアルゴリズムを共同開発しています。

もう1つは、顧客の潜在的欲求を探索する、ニーズを先回りして発見し、ソリューションを提供しているチームです。こちらでは、プロダクトの0→1段階を手掛けるものも多いです。

Layer2に該当するチームでは、私は先ほどお話した駐車場業界のDX推進に取り組んでいます。具体的な一例としては、先ほどお話したアイテックの既存の駐車場システムをもとに、駐車場のデータのハブになれるような未来の駐車場システムの構築を進めています。

既存システムの主な利用技術はレガシーシステムなのですが、新しく作っているデータハブのような部分は、インフラは GKE (GCP 提供のマネージド Kubernetes 環境) を利用していて、言語もGoを使っています。通信自体はgRPC、モバイルアプリのためにFlutterで提供したりと割とモダンな技術で展開しています。

──横断部隊ということで、チームごとに意思決定や開発フローで取り組むことは違ったりしますか。

三村:
そうですね。各チームのメンバーが、自由と責任をセットでオーナーシップを持って意思決定しているので、全然違います。

チームごとに役職も関係なく、最適な技術選定を考えています。横断部隊として技術共有はしますが、一つの技術やシステムにこだわることはないです。

──チーム間だけでなく、ビジネスサイドとの連携など、横とのつながりも重要そうですね。

三村:
おっしゃる通りで、私たちはアプリケーション開発、アルゴリズム開発、ビジネスサイド、など各職種で閉じた仕事はあまりないです。エンジニアとビジネスサイドと密に連携を取りながら、お客様のビジネスへの貢献を目指しています。

──とはいえ、ビジネスサイドとエンジニアの連携に苦労する企業も多い印象です。

三村:
私たちにも全くないとは言い切れません。ただ、私たちは心がけていることがあります。それは、失敗を振り返ることです。なぜ失敗したのか、なぜできなかったのか、という振り返りを重んじるオープンなカルチャーがあります。

失敗の原因が、エンジニアとビジネスサイドの連携不足が本質であることも多い。それを振り返り明文化して、以降は同じ過ちを繰り返さないようしています。

それぞれの失敗経験をストックしてフロー化することで、そのチームの失敗経験に閉じることなく、全ての人がそこから学べるような仕組みづくりをしています。

「Learning machine for multi specialty(相互作用(=専門性の連鎖)を通じ、自らをアップデートし続ける)」

──PKSHA Technologyに入社することで、エンジニアとしてどのような力を得ることができますか。

三村:
例えば、ソリューション開発を担うチームであれば設計力や課題解決力が得やすい。ニーズの発見を担うチームであれば、時代の流れを見据えた上で、顧客の潜在的な欲求を発見していく力が身に付くでしょう。

ただ共通して一つ挙げられるのは、事業視点を得ることができるということだと思います。

私たちのミッションは、「未来のソフトウェアを形にする」ことで、価値あるプロダクトを社会に実装すること。

そのためには、エンジニアであれど、ビジネスに向き合う必要があります。事業や業界の観点から未来を想像しながら、どう技術を実装していけばいいのか。ビジネスサイドと議論する機会も多いので、共に案件を進めていく中でビジネスを捉える力は自然に身につきます。

──どのようなバックグラウンドを持った人が多いですか。

三村:
本当にさまざまですね。前職でCTOを経験した方やGAFA出身者など、ベースの技術力が高い人は多いです。

一方で私と同じで、キャリアの幅を広げたい、開発に携わりたいという理由で入社したSIer出身の方もいます。その方は案件の整理が得意で、自身の強みを活かしながら開発にも携わっているイメージですね。

他には、大企業の新規事業開発や、ベンチャー企業で1人で開発を経験してきた人など、本当にバックグラウンドの幅は広いですよ。

──入社する方に、共通点はありますか。

三村:
バッググラウンドは違えど、みなバリューに共感しているという点は、共通しています。私たちはチームでの連携を重視しているため、バリューへの共感と理解は欠かせません。

それにただ技術が好きなだけではなく、「未来に技術を投資していく」という視点も大切にしています。そのため、コミュニケーションを大切にしたり、新しい言語や技術を学んだりなど、未来に対して積極的に行動できる人が多いです。

──PKSHA Technologyに入社することで、具体的にどのようなキャリアパスを描けるのでしょうか。

三村:
フェーズとしては大きく3つあります。

まずは、基礎力を鍛えながら才能を自覚する。つまり、個々の得意分野を高めていくフェーズです。

次のフェーズとして、才能発現の方向を探索します。各々の得意な領域も伸ばしつつ、他の領域にも挑戦することを推奨しています。

最後に、自分の選んだ方向で才能を発現 & 周囲の才能発現を支援するフェーズです。

この3つ目のフェーズくらいにくると、ご自身のキャリアの希望に応じて、専門分野を絞ることなく、自由に選ぶことができます。キャリアとしてEM(Engineering Manager)やPdM(Product Manager)、Researcherなどに進んでいる方がいます。

プロジェクトにコミットしたい人、プロダクト開発を極めたい人、組織開発に興味がある人、それぞれの未来に寄り添ってキャリアを支援していく姿勢を会社として大切にしています。

──進みたいキャリアを自身の軸で選べるって良いですね。逆に働く上で苦労する点はありますか。

三村:
やはり未来を作る難しさには直面すると思います。変化の激しい環境になるので、日々やるべき仕事や考えるべきことが変わりますし、難易度の高いテーマに直面する機会は多いです。

誰も答えを持っていないテーマに取り組む機会が多いので、それを楽しめる人には向いていると思います。逆にいうと、やるべきことが決まっていたり、それを忠実に実行することが好きな方は、少しストレスに感じてしまう人はいるかもしれません。

──三村さんは、どこにやりがいを感じていますか。

三村:
開発したシステムが様々な業界の大手の顧客を通じて、多くの方々の生活の利便性向上に貢献できることはやりがいに感じます。

また、PKSHA Technologyは多種多様な分野に精通したメンバーを抱えているので、さまざまな専門的な知見を日々学べることは大きいです。あとは、多くの案件があるので、実践を通して技術を身につけられることは魅力だと思います。
バリューに共感し、バリューが元となる

──エンジニアチームとしての課題はありますか。

三村:
エンジニア組織に限りませんが、私たちのフェーズとしては未来に対して人が足りていない、というのが正直なところです。

企業として未来に投資して行動する時間をもう少し作りたいと考えているので、共に案件の実現に向けサポートして頂けることはもちろんですが、一緒にその先の未来を想像できる人がいると嬉しいです。

──これから入社する方に期待することはありますか。

三村:
バリューを大切にして動いてほしいですね。未来に対して積極的に行動できる、信頼を築き上げていくことを大切にして、学び続けることが好き、私たちのバリューに共感して貰える方とぜひ一緒に働きたいですね。

──最後に、入社して得られるやりがいを教えてください。

三村:
PKSHA Technologyは、アルゴリズム提供の面でマルチモーダルなアルゴリズムモジュールを用意しています。各ドメインに精通した優秀な方もいるので、未来のソフトウェアを開発し、社会への実装を実現していく面白さを感じられると思います。

それに、成長途上の会社なので、このカオスな状況はやりがいもあり、楽しいと思います。カオスであるがゆえに、裁量持って色々な領域に携わることができますから。

私たちが描くミッションやバリューに共感していただける方には、ぜひ一度お会いできたら嬉しいです。